2026年7月15日

手足口病が全国で流行東京は2年ぶり警報レベルに

主に乳幼児がかかる夏の感染症「手足口病」が、2026年の夏、例年より早いペースで各地に広がっています。東京都では6月下旬に定点医療機関あたりの患者報告数が警報の基準を超え、およそ2年ぶりに警報レベルに達しました。口の中や手足に水疱ができるのが特徴で、多くは数日から1週間ほどで自然によくなっていきますが、まれに重い症状につながることもあります。夏本番を迎えるいま、家庭でできる予防のポイントを整理します。

東京都で約2年ぶりの警報レベル、報告数が前週から大きく増加

東京都のまとめによると、2026年第26週(6月22日〜28日)の手足口病の患者報告数は、定点医療機関あたりおよそ6.3人となり、前の週のおよそ3.6人から約75%増えました。都が警報の目安としている「1医療機関あたり5人」を超えたのは約2年ぶりで、都内の保健所単位でみると、31地域のうち16地域が警報レベルに達しています。地域によって流行の程度には差があり、報告数が特に多い地域も出ています。全国的にも、例年より早い時期から患者が増える傾向がみられます。

手足口病とは:口・手・足に水疱ができる夏の感染症

手足口病は、コクサッキーウイルスA群やエンテロウイルスなど、複数のウイルスが原因となって起こる感染症です。原因となるウイルスが一つではないため、一度かかっても、別のウイルスによってくり返しかかることがあります。潜伏期間は3〜5日程度が目安とされます。はじめは口の中に痛みや違和感が現れ、その1〜2日ほど後に、手のひらや足の裏、ときにひじやひざなどへ発疹や水疱が広がっていく、という順序をたどるのが典型的です。

  • 口の中の痛み・水疱

    初期には口の中に痛みや小さな水疱ができ、飲食がしづらくなることがあります。乳幼児では機嫌が悪くなったり、食欲が落ちたりする様子で気づくこともあります。

  • 手のひら・足の裏の発疹

    口の症状から少し遅れて、手のひらや足の裏、ひじやひざ、おしりなどに発疹や水疱が現れることがあります。かゆみや痛みを伴う場合もあります。

  • 発熱は比較的軽いことが多い

    発熱があっても比較的軽度で済むことが多いとされますが、症状の程度には個人差があります。高い熱が続く場合などは注意が必要です。

経過と、注意したい合併症

手足口病は、多くの場合、発症からおおむね1週間前後で軽快していくとされています。一方で、まれに髄膜炎や脳炎などの重い合併症を伴うことがあり、高い熱が続く、ぐったりしている、頭を痛がる、嘔吐をくり返すといった様子がみられる場合は、早めに医療機関を受診する目安になります。また、発症から数週間ほどたってから、一時的に手足の爪がはがれることが報告されていますが、多くは自然にもとに戻るとされています。口の痛みで水分が取りづらくなり、脱水になることもあるため、こまめな水分補給が大切です。

大人も感染し、家庭内でうつることも

手足口病は子どもに多い感染症ですが、大人が感染することもあります。子どもは比較的軽く済むことが多い一方、大人がかかると症状が強く出やすい傾向があるとされています。家庭内では、看病を通じて保護者や周囲の大人にうつることもあるため、子どもの世話をする際は、後述する手洗いなどの基本的な対策を心がけると安心です。

予防のポイント:手洗いと咳エチケット

手足口病には、現時点で予防のためのワクチンはありません。日常生活のなかでできる基本的な感染対策を続けることが、流行期を乗り切るうえで重要になります。特に、症状のある人と接した後や、排泄物にふれる機会のあるおむつ替えの後などは、丁寧な手洗いを心がけましょう。

  • 石けんと流水でこまめに手を洗う

    トイレやおむつ替えの後、食事の前などに、石けんと流水で丁寧に手を洗うことが基本です。保育の現場や家庭での基本的な対策として推奨されています。

  • 咳エチケットを心がける

    くしゃみや咳が出るときは口もとを覆い、飛沫を周囲に広げない配慮を心がけましょう。マスクの着用も一つの方法です。

  • タオルや食器の共用を避ける

    家庭内では、タオルや食器の使い回しを避けることが、感染を広げないための一つの目安になります。回復後もしばらくは便からウイルスが出ることがあるとされ、排泄物の処理には注意が必要です。

まとめ:過度に恐れず、基本の予防と早めの受診を

手足口病には特効薬がなく、治療は症状をやわらげる対症療法が中心となります。多くは自然に回復するため過度に恐れる必要はありませんが、水分補給と休養を意識し、口の痛みが強い場合は食べやすいものを選ぶなどの工夫が役立ちます。高い熱が続く、水分が取れない、ぐったりしているといった場合は、早めに医療機関に相談してください。流行の程度や対応は地域や医療機関によっても異なるため、気になる症状があるときは、かかりつけ医などに確認することをおすすめします。こまめな手洗いという基本の対策を続けながら、夏の感染症シーズンを健やかに過ごしましょう。

2026年6月 1日

2026年診療報酬改定で窓口負担はどう変わる

2026年(令和8年)度の診療報酬改定が、6月1日から施行されました。診療報酬とは、医療機関が提供する診察や検査、処置などのサービスに対して支払われる公定価格のことです。今回は医療従事者の賃上げと物価高騰への対応が大きな柱となり、本体部分の引き上げ幅は近年でも有数の高い水準となりました。受診する診療内容によっては、領収書に見慣れない項目が並び、窓口で支払う金額がわずかに変わるケースもあります。患者として知っておきたいポイントを整理します。

改定の全体像:本体は約30年ぶりの高い引き上げ幅

今回の改定では、医師や看護師らの技術料にあたる「本体部分」がプラス3.09%と、1990年代後半以来となる大幅な引き上げとなりました(この数値は令和8・9年度の2年度を平均したものです)。一方で薬の価格である「薬価」はマイナス0.87%に抑えられ、全体ではプラス2.22%の改定です。本体の引き上げ分のうち多くは、医療現場で働く人の賃上げと、人件費や光熱費などの物価高騰への対応に充てられています。なお薬価の見直しは4月1日に先行して実施され、診療報酬の本体部分が6月1日からの適用となりました。

新しい項目:賃上げと物価高に対応する加算が登場

医療従事者の処遇改善を支えるため、外来や在宅医療における「ベースアップ評価料」が拡充され、点数が従来のおおむね2〜3倍へと引き上げられました。さらに、物価上昇に対応するための「外来・在宅物価対応料」が新たに設けられ、初診・再診の際に原則として一律で上乗せされます。これらは医療機関の経営や働く人の待遇を守るための仕組みですが、その一部は患者の窓口負担にも反映されるため、領収書に新しい名称の項目として現れます。

  • 再診料が引き上げ、初診料は据え置き

    くり返し通院する際の「再診料」が75点から76点へと引き上げられました。1点は10円換算のため、3割負担の方で数円程度の増加です。一方、初めて受診する際の「初診料」は291点のまま据え置かれています。

  • 領収書に「物価対応料」などの新項目

    新設された「外来・在宅物価対応料」や拡充された「ベースアップ評価料」により、領収書の点数明細に見慣れない項目が並びます。何にいくらかかっているかは、受診ごとに渡される点数明細で確認できます。

  • 負担増はおおむね小幅にとどまる見込み

    実際の上乗せ額は受診内容や医療機関の届出状況によって変わりますが、3割負担の場合の目安は再診で数円〜十数円ほど、初診でも百円に満たない程度とされています。月1回の通院であれば年間でも数百円規模にとどまり、大幅な負担増にはなりにくいと考えられています。

医療DXの推進:評価の軸が「体制整備」から「利用実績」へ

今回の改定では、医療のデジタル化(医療DX)を後押しする仕組みも見直されました。これまでの「医療情報取得加算」と「医療DX推進体制整備加算」が整理・統合され、新たに「電子的診療情報連携体制整備加算」が設けられています。マイナ保険証や電子処方箋を活用し、過去の診療情報を医療機関どうしで共有できる体制を評価するものです。これまでは体制を「整備しているか」が中心でしたが、今後はマイナ保険証が実際にどれだけ「使われているか」という利用実績がより重視される方向へと変わりました。

マイナ保険証:窓口負担の差はなく、手続き面のメリットが中心

かつてはマイナ保険証を使うかどうかで窓口負担にわずかな差が生じていましたが、現在その差は解消されており、マイナ保険証でも「資格確認書」でも、窓口で支払う自己負担額は変わりません。マイナンバーカードを持っていない方には、申請しなくても当面は無料で「資格確認書」が交付されるため、引き続き安心して受診できます。マイナ保険証を利用する主なメリットは、負担額そのものではなく、次のような手続き面の利便性にあります。

  • 高額療養費の手続きが簡単に

    事前に「限度額適用認定証」を取得しなくても、窓口での支払いが自己負担限度額までで済むようになり、いったん高額を立て替える手間が軽減されます。

  • 過去の診療・健診情報を医師が確認できる

    本人の同意のもと、過去の処方薬や健診結果を医師が参照できるため、重複した薬の処方を防いだり、より適切な診療につなげたりしやすくなります。

  • 医療費控除や保険の切り替えがスムーズに

    1年間の医療費をマイナポータルでまとめて確認でき、確定申告の医療費控除が手軽になります。就職や転職で保険が変わっても、同じカードを使い続けられます。

まとめ:負担増は小幅、領収書の確認を習慣に

2026年6月施行の診療報酬改定は、医療を支える現場の賃上げと物価高への対応を主眼としたものです。患者の窓口負担は項目が増える場面はあるものの、その増加は多くの場合小幅にとどまります。受診の際は領収書の点数明細に目を通し、どのような項目が加算されているかを確認する習慣をつけると安心です。また、マイナ保険証は窓口負担を下げるものではありませんが、高額療養費の手続きや医療情報の活用といった面で利便性が高まっています。制度を正しく理解し、自分に合った形で上手に活用していきましょう。

2026年5月13日

ハンタウイルス確認のクルーズ船、カナリア諸島に到着 乗客ら下船へ

ハンタウイルスの集団感染が疑われていたオランダ船籍のクルーズ船が、スペイン領カナリア諸島のテネリフェ島に到着しました。船内ではすでに症状のある人はいないとされており、乗客や一部の乗員は検査を受けたうえで、小型船や専用車両を使って空港へ移動し、各国が手配した航空機で帰国する予定です。

背景:南米出航後に発生したハンタウイルス感染の疑い

このクルーズ船は4月1日に南米アルゼンチンを出航しました。その後、南米でバードウォッチングなどをしていた乗客の死亡が相次ぎ、世界保健機関(WHO)は5月2日にハンタウイルス感染を初めて確認しました。感染拡大への懸念が高まるなか、船はテネリフェ島に到着し、乗客の下船と帰国に向けた対応が進められています。

現在の状況:症状のある人は確認されず、順次下船へ

報道によると、現時点で船内に症状のある人はいないとされています。乗客と一部の乗員は必要な検査を受けたうえで下船し、各国の手配によって帰国する見通しです。感染が確認された状況下でも、関係機関は慎重に移送と健康管理を進めています。

  • テネリフェ島に到着後、検査を経て移送

    クルーズ船はスペイン領カナリア諸島のテネリフェ島に到着。乗客と一部の乗員は検査を受けた後、小型船や専用車両で空港へ向かい、帰国のための移動が進められています。

  • WHOは公衆衛生上のリスクは低いと説明

    WHOのテドロス事務局長は、船内に症状のある人はいないとしたうえで、新型コロナウイルスのような事態ではなく、公衆衛生上のリスクは依然として低いとの見方を示しました。

  • 船内には少なくとも147人、日本人乗客も

    運航会社によると、6日時点で船内には乗客と乗員あわせて少なくとも147人が滞在しており、その中には日本人1人も含まれていたとされています。

経緯:乗客の死亡を受けて感染が判明

船内では、4月11日にオランダ人男性の乗客が死亡し、さらに26日にはすでに下船していたその妻も亡くなりました。5月2日にはドイツ人女性客も船内で死亡し、こうした経緯を受けてハンタウイルス感染が確認されました。各国の保健当局や国際機関は、その後の動向を注視しています。

今後の見通し:下船後は補給のうえオランダへ

乗客らの下船後、クルーズ船は燃料や物資の補給を行い、オランダのロッテルダムへ向かう予定です。航行にはおよそ5日かかる見通しとされており、今後も乗員の健康管理や国際的な情報共有が重要になります。感染症対応では、冷静なリスク評価と迅速な連携が引き続き求められます。

2026年4月 2日

母親と赤ちゃんを守れ 病院外での緊急出産に備える救急救命士たち

2030 SDGsの実現に向けて、安全・安心なお産環境を整えることは、途上国だけでなく日本においても重要な課題となっています。少子化の進行に伴い産科医療機関の減少や地域偏在が進むなか、妊婦が出産施設に到着する前に分娩が始まってしまうケースへの備えが、あらためて問われています。

背景:日本でも求められる「病院到着前」の出産対応

こうした課題に対応するため、1月下旬、北海道恵庭市で「病院に到着する前」を想定した産科救急の教育コース(BLSO)が開催されました。道内から24人が参加し、そのうち14人は救急救命士。ほかにも救急医、看護師、分娩施設のない地域で診療にあたる総合診療医など、多職種が集まりました。

会場となった北海道ハイテクノロジー専門学校からは、救急救命士を目指す学生4人も参加。出産に関わる緊急対応を、現場さながらの実践形式で学びました。

実習内容:分娩介助から新生児蘇生までを体験

研修では1日を通して、妊婦の状態確認、救急車内での分娩対応、分娩介助、産後の大量出血への対応、新生児蘇生など、出産に関わる救急対応の一連の流れを学びました。

  • マネキンを用いた分娩介助の訓練

    実習ではマネキンを使い、赤ちゃんの取り上げ方や、へその緒を切る処置、妊婦への効果的な声かけなどを体験。限られた環境のなかでも落ち着いて対応する力を養いました。

  • 新生児の保温と呼吸管理の確認

    生まれたばかりの赤ちゃんは体温が奪われやすいため、タオルでのくるみ方や、手順に沿った気道確保、人工呼吸の方法などについても実践的に確認しました。

  • 救急車内での判断力を磨くシミュレーション

    救急車内での分娩を想定した訓練では、4人1組で救急隊役を担当。冬の北海道ならではの厳しい環境を踏まえながら、母親と赤ちゃんのどちらを優先して搬送するかなど、現場で迫られる判断について考えました。

現場の声:安心につながる対応の大切さ

妊婦役を務めた助産師は、「息まないように、手すりをつかんだ私の手を外し、やさしく握って励ましてくれたり、赤ちゃんの状態を教えてくれたりして、安心できた」とコメントしました。技術だけでなく、不安の大きい妊婦に寄り添うコミュニケーションの重要性も、今回の研修で共有された大きな学びの一つです。

今後の課題:地域を問わず安心して出産できる体制へ

出産施設の減少や偏在が進むいま、病院の外で分娩が始まるリスクは決して特別なものではありません。母子の命を守るためには、救急救命士や医療従事者が産科救急に対応できる体制づくりが不可欠です。誰もが安心して出産に臨める社会を実現するために、こうした実践的な訓練の積み重ねが今後ますます重要になります。

2026年1月26日

埼玉の細胞加工施設に業務改善命令、患者死亡事例で衛生管理の不備が明らかに

2026年1月23日、厚生労働省は再生医療安全性確保法に違反したとして、埼玉県坂戸市にある細胞加工施設「コージンバイオ社 埼玉細胞加工センター」に対し、業務改善命令を発出しました。

背景:患者死亡を受けた立ち入り検査

この措置は、同施設で加工された細胞を使用した再生医療を受けた患者が死亡した事案を受けて実施された立ち入り検査の結果、複数の重大な法令違反が発覚したことによるものです。

2025年8月、都内のクリニックで脂肪由来幹細胞の点滴投与を受けた50代外国籍女性が、施術後に急変し死亡。この事態を受け、厚労省は当該クリニックと細胞加工施設の双方に治療および製造の緊急停止命令を出していました。

確認された主な法令違反

立ち入り検査により、以下のような深刻な管理体制の不備が明らかになりました:

  • 衛生管理体制の欠陥
    細胞を直接扱う区域において、基準値を上回る菌の検出が繰り返し発生していたにもかかわらず、汚染発生時の標準手順に従った適切な対応が取られていませんでした。
  • 原料の安全性確認の不履行
    細胞培養に使用する原料について、使用前に実施すべき安全性確認検査が省略されているケースが確認されました。
  • 内部監査の未実施
    製造・品質管理体制が適切に機能しているかを確認する定期的な内部監査が、一度も実施されていなかったことが判明しました。

今後の対応

厚生労働省は今回の業務改善命令を通じて、同施設に対し管理体制の抜本的な見直しを求めています。再生医療分野における安全性の確保は患者の生命に直結する重要課題であり、今回の事案は医療現場における品質管理の重要性を改めて浮き彫りにしました。