10年前の熊本地震の教訓生きる 患者370人受け入れた熊本赤十字

2026年7月28日に発生した熊本地震では、地域の災害拠点病院である熊本赤十字病院が、地震直後から多数の救急患者を受け入れました。発災から10分後には災害対策本部を立ち上げ、4日間で計370人に対応。2016年の熊本地震を受けて見直した事業継続計画や、日頃から重ねてきた訓練が迅速な医療体制の構築につながりました。地震発生時の対応と、避難生活が長期化するなかで注意したい健康上の問題を整理します。

地震発生から10分後、災害対策本部を設置

熊本赤十字病院では、地震発生からおよそ10分後に災害対策本部を設置しました。職員や院内の建物に大きな被害がないことを確認し、救急患者を全面的に受け入れる方針を決定。一般の外来診療を一時休止するとともに、予定されていた手術や検査を調整し、40〜50人ほどの入院患者に退院してもらうことで病床を確保しました。

4日間で救急患者370人を受け入れ

病院が7月28日から31日までの4日間に受け入れた救急患者は、計370人にのぼりました。このうち95件が救急搬送で、被災した熊本南病院の入院患者13人も、地震当日の夜から翌朝にかけて受け入れました。発災直後は外傷や骨折の患者が多く、7月31日までに15人の手術を実施。足の切断や骨盤骨折、脊椎損傷など、対応の難しい手術も担いました。

  • 一般外来を一時休止

    救急医療を優先するため一般の外来診療を休止し、限られた医療スタッフや設備を被災者の治療に集中させました。

  • 入院病床を確保

    予定していた手術や検査を調整し、退院可能な患者に協力を求めることで、新たな患者を受け入れるための病床を確保しました。

  • 周辺医療機関と役割を分担

    重い外傷や難しい手術を熊本赤十字病院が担い、周辺の医療機関でも対応できる患者については地域内で分担して治療しました。

2016年の熊本地震で得た教訓

2016年の熊本地震では、さまざまな情報が交錯し、院内の指揮命令系統が混乱するなどの課題が残りました。熊本赤十字病院はその経験をもとに、BCP(事業継続計画)を見直しました。災害発生後の時間経過に応じて誰が何を担当するのかを整理し、役割分担の明確化と指揮命令系統の一元化を進めています。

災害対応訓練も年8回実施しており、今回は地震発生から30分以内に、重症度を問わず患者を受け入れられる体制を整えることができました。治療の優先順位を判断するトリアージを含め、日頃の備えが迅速な対応につながったとされています。

避難生活では熱中症や脱水に注意

地震発生から1週間以上がたつと、外傷や骨折の治療は落ち着く一方、厳しい暑さによる熱中症が大きな問題になります。断水や停電、慣れない避難所生活のなかでは、十分な水分を取れず、本人が気づかないうちに脱水状態になることもあります。特に高齢者や持病のある人、乳幼児は体調の変化に注意が必要です。

  • 熱中症・脱水

    のどが渇く前からこまめに水分を取り、可能な範囲で涼しい場所に移動しましょう。めまい、吐き気、強いだるさ、意識がもうろうとするなどの症状がある場合は、早めの医療相談が必要です。

  • エコノミークラス症候群

    避難所や車内で長時間同じ姿勢を続けると、足の静脈に血栓ができる危険があります。無理のない範囲で足首を動かし、定期的に体を動かすことが大切です。

  • 慢性疾患の悪化

    避難生活のストレスや服薬の中断により、血圧や血糖値が上がることがあります。心不全や脳卒中などのリスクにも注意し、薬が不足した場合は医療スタッフへ相談しましょう。

避難生活の長期化で増える健康上のリスク

暑さによる脱水は、脳梗塞などの発症につながるおそれがあります。また、避難生活が長引くと体力や認知機能が低下し、誤嚥性肺炎や床ずれが起こりやすくなることも懸念されます。高齢者については、食事や水分の量、歩行状態、会話や表情の変化などを周囲が確認することも重要です。

被災者だけでなく、支援にあたる医療機関や高齢者施設の職員にも心身の負担が重なります。支援する側の休養や心のケアを含め、地域全体で長期的に医療・介護を支える体制が求められます。

医療チームを避難所や高齢者施設へ派遣

熊本赤十字病院では8月5日から、被害の大きかった宇城市や八代市の避難所、高齢者施設を支援するため、医師、看護師、薬剤師などで構成するチームを編成し、順次派遣しています。被災者一人ひとりの医療・ケアの必要性を把握し、災害関連死を防ぐための活動を続けています。

まとめ:過去の教訓と日頃の訓練が迅速な医療対応に

今回の熊本赤十字病院の対応では、2016年の熊本地震で明らかになった課題をもとに、BCPの見直しや指揮命令系統の整理、定期的な訓練を続けてきたことが生かされました。災害医療では、発災直後の外傷への対応だけでなく、その後の熱中症、脱水、慢性疾患の悪化、感染症や心の不調などにも注意が必要です。避難生活を送っている方は無理をせず、体調に変化がある場合や薬が不足している場合には、避難所の医療スタッフや地域の医療機関へ早めに相談してください。

参考:朝日新聞「10年前の熊本地震の教訓生きる 患者370人受け入れた熊本赤十字」