母親と赤ちゃんを守れ 病院外での緊急出産に備える救急救命士たち
2030 SDGsの実現に向けて、安全・安心なお産環境を整えることは、途上国だけでなく日本においても重要な課題となっています。少子化の進行に伴い産科医療機関の減少や地域偏在が進むなか、妊婦が出産施設に到着する前に分娩が始まってしまうケースへの備えが、あらためて問われています。
背景:日本でも求められる「病院到着前」の出産対応
こうした課題に対応するため、1月下旬、北海道恵庭市で「病院に到着する前」を想定した産科救急の教育コース(BLSO)が開催されました。道内から24人が参加し、そのうち14人は救急救命士。ほかにも救急医、看護師、分娩施設のない地域で診療にあたる総合診療医など、多職種が集まりました。
会場となった北海道ハイテクノロジー専門学校からは、救急救命士を目指す学生4人も参加。出産に関わる緊急対応を、現場さながらの実践形式で学びました。
実習内容:分娩介助から新生児蘇生までを体験
研修では1日を通して、妊婦の状態確認、救急車内での分娩対応、分娩介助、産後の大量出血への対応、新生児蘇生など、出産に関わる救急対応の一連の流れを学びました。
-
マネキンを用いた分娩介助の訓練
実習ではマネキンを使い、赤ちゃんの取り上げ方や、へその緒を切る処置、妊婦への効果的な声かけなどを体験。限られた環境のなかでも落ち着いて対応する力を養いました。
-
新生児の保温と呼吸管理の確認
生まれたばかりの赤ちゃんは体温が奪われやすいため、タオルでのくるみ方や、手順に沿った気道確保、人工呼吸の方法などについても実践的に確認しました。
-
救急車内での判断力を磨くシミュレーション
救急車内での分娩を想定した訓練では、4人1組で救急隊役を担当。冬の北海道ならではの厳しい環境を踏まえながら、母親と赤ちゃんのどちらを優先して搬送するかなど、現場で迫られる判断について考えました。
現場の声:安心につながる対応の大切さ
妊婦役を務めた助産師は、「息まないように、手すりをつかんだ私の手を外し、やさしく握って励ましてくれたり、赤ちゃんの状態を教えてくれたりして、安心できた」とコメントしました。技術だけでなく、不安の大きい妊婦に寄り添うコミュニケーションの重要性も、今回の研修で共有された大きな学びの一つです。
今後の課題:地域を問わず安心して出産できる体制へ
出産施設の減少や偏在が進むいま、病院の外で分娩が始まるリスクは決して特別なものではありません。母子の命を守るためには、救急救命士や医療従事者が産科救急に対応できる体制づくりが不可欠です。誰もが安心して出産に臨める社会を実現するために、こうした実践的な訓練の積み重ねが今後ますます重要になります。
