がん種別の5年生存率に関する最新データ分析
調査概要
2025年11月19日、国立がん研究センターより、全国規模での大規模ながん生存率調査の結果が公表されました。この調査は2012年から2015年の期間に診断を受けた約254万人のがん患者を対象としており、44都道府県のデータを活用した過去最大規模の分析となっています。
主要な調査結果
がん種別の生存率ランキング
調査によると、5年生存率には部位によって大きな差が見られました。
高い生存率を示した部位(男性)
・前立腺がん: 94.3%
・皮膚がん: 90.9%
・甲状腺がん: 88.6%
高い生存率を示した部位(女性)
・甲状腺がん: 92.7%
・皮膚がん: 92.4%
・乳がん: 88.7%
一方で、男女ともに膵臓がんが最も厳しい状況にあり、男性10.7%、女性10.2%という結果となりました。
長期的なトレンド分析
1993年以降のデータを時系列で分析したところ、以下のような傾向が明らかになりました。
改善が見られた分野
・悪性リンパ腫
・多発性骨髄腫 これらの血液がんにおいては、男女ともに生存率の向上が確認されています。
膵臓がんなど一部のがん種では、依然として生存率の大幅な改善には至っていない状況が続いています。
病期による生存率の違い
がんの進行度は生存率に大きく影響します。男女合算のデータでは、早期発見の場合(転移なし)
・胃がん: 92.4%
・大腸がん: 92.3%
いずれも9割以上という高い生存率を示しています。
進行がんの場合(遠隔転移あり)
・胃がん: 6.3%
・大腸がん: 16.8%
早期発見との差は極めて大きく、早期診断の重要性が浮き彫りになっています。
調査手法の特徴
今回の調査では、国際基準に適合した「純生存率」という指標が採用されました。これは、がん以外の死因による影響を除外して算出する方法で、より正確ながんそのものの予後を反映しています。
従来公表されていた全がん患者の総合的な5年生存率については、部位による差が大きく実態を適切に表現しにくいという理由から、小児がんを除き今回は公表が見送られました。
データ規模の拡大
前回調査(2009-2011年診断、22府県、約59万症例)と比較すると、今回は対象地域、症例数ともに大幅に拡大しており、より信頼性の高い統計となっています。
