等々力脳神経外科 八塚 如院長 (尾山台) インタビュー

患者さんの89日を支えたい「脳外科医」から「町のお医者」へ 等々力脳神経外科 八塚如院長
国立市から移転して新規開院したという「等々力脳神経外科」。院内はウッドテイストで、温もりを感じる落ち着いた雰囲気。八塚先生は穏やかな口調で親しみやすいが、過去には脳外科医として数多くの手術を執刀した、医師歴も長いベテランドクターだ。この地では「脳外科医としてのこだわり」を捨て「いつまでも町のお医者でありたい」という想いで診療にあたっている。

「基幹病院は担当医の診療が3か月に一度だから、あとの89日を診る医者になりたい」というポリシーを持つ先生に、今の診療スタンスに至るまでの経緯や理想の医師像など、たっぷりお話を伺った。

八塚 如院長インタビュー父が医者だったというのが大きな理由ドクターを目指した経緯を教えてください
私の家系は、祖父、父、兄と三代続く医者。祖父は眼科医、父は開業の外科医、兄は大学病院で小児外科の教授をしていました。当時は「医者の家系で育ったら医者になる」という選択肢しかなく、私は「医者になるんだ」と自然に思っていました。

開業するに至ったきっかけはどういうことだったのでしょうか?
私が勤務していた最終病院は手術率が高くなく、救急車で運ばれてきても9割は手術を必要としない患者さんでした。手術が必要ない方は、リハビリのために継続して通院したり、紹介元の病院に戻ったりします。経過観察ですと、2週間から1か月に一度の頻度で来院されます。
手術を必要としない患者さんも含めて、部長外来に来られる患者さんの多くは今後の予後のお話をしに来る方たちでした。このような患者さんたちをしっかり支えてあげたいと思い、外来診療専門である開業に踏み切りました。

どのようなスタンスで診療を行っているのですか?
患者さんのお話をきちんと聞きます患者さんのお話をきちんと聞き「心配な部分は経過をみるから安心していいよ」というスタンスで診療しています。

私は、いつまでも町のお医者でありたい。患者さんが自分の病気を容認し「治療を要するか」「予防を要するか」「経過観察でよいか」を選別するのが私の役目だと思っています。

当院に来る方は手術が目的ではなく「危険な病気なのか、病気ではないのか」その判断を目的に来院されます。今まで培ってきた経験と技術力で診断し、CT検査などで少しでも疑いがある場合は速やかに専門的な病院へ紹介しています。

話を聞いてもらうだけで安心する場合も多いですよね?
そうですね。しびれやめまいなどで不安を感じて来院される方もいますが、異常がなく安心して帰る方がほとんどです。ただ私たち町医者の使命は、安心させることではなく「病気かどうか」「どういう経過観察をしていくか」を選別することだと思います。

国立市のメディカルモールにいた頃は「私は脳外科医だ」という「殿様外来」をやっていたようです。それを振り払うために、この地に新たに開業したわけです。だからここでは、風邪や水虫、捻挫など、頭のてっぺんから足の爪先まで幅広く診ています。

安心して帰る方がほとんどですどのような患者さんが多いのでしょうか?
お子さんは、頭をぶつけて来院する方がほとんどです。高齢の方は、脳卒中などを経験された「脳血管障害がある方」が多いですね。一度脳卒中となった方はリスクを持っていますから「再発がないか」「リスクが増えていないか」「日常生活動作が低下していないか」などを定期的に診ています。

必要に応じて「自宅でできる慢性期のリハビリテーション」をここで一緒に行い「家でも行ってください」と指導しています。リハビリテーション病院では発症後3か月~半年位までは治療を行いますが、慢性期の1年を過ぎると、悪化しない限り治療をしません。そのため当院では、脳卒中で倒れた方の1年後のケアをできるようにして、これ以上、日常生活動作が悪化しないようにリハビリテーションの指導を行っています。(維持期あるいは慢性期のリハビリテーションといいます。)

患者さんは近隣の方がほとんどですが、以前開業していた国立市のメディカルモール時代の患者さんも何人かいらっしゃいます。長いもので、もう15年くらいの付き合いになりますね。

お子さんからご高齢の方まで幅広い年代の方が来院するんですね
幅広い年代の方が来院されますはい。ただ、1人で来院する患者さんより、家族同伴で来院される患者さんの方が深刻な症状だと思います。たとえば、1人で来院して「物忘れがする」と言う方と、家族が同伴して「物忘れをする」という患者さんでは、症状の重さがまったく異なります。

お子さんは、もちろん家族同伴で来る方がほとんどです。お子さんの診療となると、お子さんだけでなく、親御さんも同じくらいガチガチに緊張しています。話を聞いていくうちに徐々に緊張がとけて本人が走り回り、それを見た親御さんもホッとして帰宅されます。お子さん1人でも、2人分診察しているような感じですね(笑)。

お子さんは「頭をぶつけてコブができた」という理由での来院が多いですが、検査が必要ないケースがほとんどです。万が一のことを考え、受診日の夜に「体調はいかがですか?明日また来てくださいね」と電話をしています。そうすると、お母さんも、何より私も安心します。

あのときは大変だったな、という経験はありますか?
若い頃は下っ端として手術や診療の助手しかできませんでした脳外科医として手術をしていた頃は「脳外科医としての苦労」しかありませんでした。若い頃は下っ端として手術や診療の助手しかできませんでした。チーフの立場になると「後輩を育てなければならない」と同時に「自分も伸びなければならない」ため、責任が大きく、つらいこともたくさんありました。

脳外科の手術をしていた頃は「手術がうまくいった/いかない」という視点が主体で、患者さん本人との情報共有は希薄でした。まさに、脳外科医は客観的立場にいなくてはならないのです。術後の経過で心配事があっても、患者さんに電話をするのではなく、病棟に電話をして状況を確認するのが普通でした。

開業してからは患者さんやご家族とお話しする時間ができて、家庭環境などのさまざまな情報を共有できるようになり、患者さんとの距離や付き合い方が大きく変わりました。医者としてのエネルギーの使い方がまったく違いますね。

国立市から世田谷に移転した経緯をお聞かせください
数年前までは自分のことを「脳外科専門医」と言っていました。国立市のメディカルモールにいたとき、患者さんが「眼医者に行った」「歯医者に行った」「医者に行った」と言うのを聞き、私はこの「医者」という言葉に違和感を覚え、少し嫌な気持ちがありました。しかし、世田谷に移転してからはそのこだわりがなくなり、自分のことを「お医者」と言えるようになりました。

前までは「脳外科専門医」という変なプライドがありましたが、今は「町のお医者」という言葉がしっくりくる気がします。あと15年くらいは診療を続けていきたいですから、それでも患者さんが来てくれるクリニックでありたいと思います。

診察室受付


「お医者」という考えに至ったきっかけはどのようなことだったのでしょうか?
国立市で開業したときから「お医者」という気持ちはありました。しかし、当時は脳外科クリニックが少なく、希少だからと大切にされた為かなかなか「お医者」と言うことができなかったんです。往診や患者さんへの時間外の電話も「家が遠いから」などの理由をつけて行っていませんでした。

そういう「殿様診療ではいけない」と思い、心機一転、職住接近のこの地に移転しました。ここでは、心配な患者さんには個人の電話番号を渡し「夜中でも連絡していいよ、往診もするからね」と伝えています。些細なことでも、安心してもらえるのであれば続けていきたいと思います。

診療面で気をつけていることはありますか?
「一人ひとりに合った治療をする」こと「一人ひとりに合った治療をする」こと。予防や治療には、統計学的に「この薬をこの量だけ飲めば、こういう結果を得られる」というエビデンスが示されています。

しかし、リスクや家庭環境は一人ひとり違うため、一律に「この薬を使う」という治療ではなく、その人に合ったオーダーメイドの治療をしています。

たとえば物忘れの患者さん。全員に同じ薬を処方するのではなく「リハビリがよい」「孤立させない方がよい」などの色々な方法を考えます。あとは「話をしに来てね」「遊びに来てね」と、その方の家庭環境からどの治療が一番よいかを考えて治療を行っています。副作用も多いので、処方する薬もまずは私自身で試しています。

担当医の診療が3か月に一度ですから、あとの89日を診る医者になりたい先生の思い描く理想の医師像をお聞かせください
基幹病院は担当医の診療が3か月に一度ですから、あとの89日を診る医者になりたいと思います。手術が必要ないと診断されても、心配事はあるはずです。その方たちを安心させてあげたい。私も脳外科医ですから、来院していただければアドバイスをします。

また「往診」よりも、高齢者の「看取り」をしてあげたいと考えています。私が元気であれば、まだまだ診療をしたい。77歳になって患者さんを看取りながらそのお宅で自分も死んでいく、が理想ですね(笑)。

余談ですが、開業されている40~60代の先生は、専門性が高い方が多いです。内視鏡の技術も驚くほど高い先生がたくさんいらっしゃいます。町医者も捨てたもんじゃないと思いますよ(笑)。

院長プロフィール八塚如院長<経歴>
1978年 東京慈恵会医科大学卒業

1999年 国立市でやつづか脳・神経クリニック開設

2005年 医療法人社団如心会設立

2013年 やつづか脳・神経クリニック閉院

2013年 医療法人社団如心会移転

2013年 等々力脳神経外科開院

<資格>
医学博士
医療法人社団如心会理事長
日本脳神経外科学会専門医

等々力脳神経外科 アクセスマップ

住所 東京都世田谷区等々力4-9-3-101
電話番号 03-6432-2332
アクセス 東急大井町線 尾山台駅から徒歩2分
診療科目 脳神経外科・循環器科・神経内科・リハビリテーション
診療時間 9:00~12:30/14:00~17:30
休診日 火曜、土曜午後、日曜、祝祭日
主力検査機器 マルチスライスCT機器、超音波検査機器

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