くれクリニック 呉 兆礼院長 (西新宿) インタビュー

患者さんに寄り添う「居者」になりたい  在宅訪問診療にかける想いとは くれクリニック 呉兆礼院長
西新宿のオフィスビルにクリニックを構える「くれクリニック」。在宅訪問診療も行っている呉先生は、地域の患者さんに寄り添うホームドクターだ。「通院が困難になったらボクが診に行ってあげるから」と優しい笑顔で話す呉先生は一般外科出身で、患者さんの最期を看取る機会も多かったという。

「患者さん本人にとってよい最期をつくりたい」そう語る呉先生に、現在に至るまでの経緯や想い出深いエピソード、そして在宅訪問診療にかける思いを語っていただいた。

呉 兆礼院長インタビュー小学生の頃に通っていた教会での話しがきかけでドクターにドクターになったきっかけを教えてください
私は小学生の頃に教会に通っていて、そこで「イエス・キリストが泥の水で目を洗うと目が見えるようになった」という奇跡の話を聞きました。そして「目が見えない人が見えるようになる素晴らしさ」というのを感じたのです。今になって思えば、泥の水で目を洗って見えるようになるのは医学的にあり得ない話ですが「困っている人を救いたい」という想いを抱き始めたきっかけです。

それ以来、そういった仕事に従事したいと思っていました。ドクターにたどり着くまでには紆余曲折ありましたが、最終的には夢を叶えられてよかったと思っています。

幅広い分野を経験されていますが、呉先生の専門分野をお教えください
もともとは東京女子医科大学病院の第二外科に入局し、治療にあたっていました。その第二外科では一般外科と救命救急科を担っていましたので、専門分野でいうなら消化器外科ですかね。

しかしここは大学病院ではないため、今は内科外科全般を診ています。ほかの勤務医の先生に循環器などをお願いするなどして、幅広く対応できるようにしています。私は訪問診療でクリニックを空けることも多く、そういったときは私と同じ内科を診ている先生にクリニックを任せています。

患者さんへの説明や接し方などで気をつけていることはありますか?
患者さんと同じ目線で話すようにしています訪問診療だとお年寄りが中心ですから、なるべく患者さんと同じ目線で話すようにしています。それに「患者さんに対して怒らない」と決めています。患者さんに対し、怒ることで話を進めるのではなく、理解し合えるまで話し合いたいと思っています。

理解し合えないときは、まずその方の話をもう一度よく聞く。どんなことも、ちょっとした掛け違いで合わないことが多いので、それがどこにあるかを探るのが大事だと思っています。

それに、患者さんと医師に上下関係はないと思っています。医師も患者さんも同じ人間で、医師はあくまで患者さんの「治りたい」という気持ちを後押しするだけ。だからこそ「お医者様」なんて関係にはなりたくありません。

先生のポリシーは「居者」とのことですが、詳しく教えてください
常に患者さんの側にいて心を和ませてあげる医者となり、何科に進むのか進路を決める際「大変なところにいきたい」「患者さんの側に寄り添っていたい」と思っていました。そういった理由で外科に進み、そこで、患者さんが術後回復するまでや、残念ながら亡くなられた方をたくさん目にしました。

東京女子医大第二外科では「医者というのは、治療だけでなく、常に患者さんの側にいて心を和ませてあげる者だ」という「居者」の教えをいただきました。我々第二外科の医局員は、常にそれを心に留めて診療にあたっていました。それが今の在宅訪問診療につながっています。

救急外来から在宅訪問診療に至った経緯をもう少し詳しくお聞かせください
患者さんと同じ目線で話すようにしています私が外科に進んだのは、病気は手術をすれば治るものだと思っていたからなのです。しかし実際は、手術をしても2~3年経つと再発して、病院に戻ってきてしまうことが多々あるのです。

そして最期を病院のベッドで過ごすという患者さんをたくさん目にしました。そんなときに「最期くらい病院のような殺風景な場所ではなく、自分の家で過ごさせてあげたい」と思いました。

家に帰れない原因が何かを考えたら「看護師さんやドクターがそこには居ない」ということ。そう思ったときに「じゃあ私が側に行こう」と思ったのが始まりでした。

外科手術というのは、定型的なことを理解した上で実際に執刀経験を積む必要があります。私が大学に残ることで後輩たちの手術件数が減ってしまうのであれば、自分は身を引いて後輩たちに症例を回せばよいし、自分は患者さんたちにとって最良の最期をつくるお手伝いをしていこうと思いました。また、このような一般クリニックがそういった「受け皿的な役割」を果たすことで、大学病院や基幹病院が治療をする場所としての機能を発揮すると思っています。

印象深い患者さんとのエピソードはありますか?
開院当初から来てくれていた年配の患者さんがいました。その患者さんが「以前かかりつけだった先生たちは、みんな病気とかで亡くなってしまった。呉先生は大丈夫ですよね?」と言うのです。さすがに私もちょっと不安になり「それはわからないけど頑張りますね」と話しました(笑)。

開院当初から来てくれていた年配の患者さんがいましたずっと通院していたのですが、体の衰えもあり、とうとう通院できなくなってきました。「じゃあ今度は私が診に行くよ」ということで訪問診療になり、最終的には自宅で看取ってあげることができました。「先生の顔を見るだけで元気が出ます」と言ってくれたのが印象的でした。

訪問診療では、多くの場合自宅で初顔合わせをします。医療情報は前もっていただいていますが「どんな患者さんなのだろう」「性格は合うのだろうか?」など、ちょっと不安がよぎります。しかしそれは患者さんの方も同じで「どんな医者が来るのだろうか?」と不安でいっぱいだと思います。そういったところは、通院中の患者さんに「通えるうちは通ってね。通えなくなってもちゃんと診に行ってあげるから大丈夫だよ。」と言ってあげられるので、患者さんも安心して通えると思います。一般外来と訪問診療の両方行っている強みだと思っています。

訪問診療では患者さんの最期を看取る機会も多いのではないでしょうか?
もちろんそういった機会も多いです。最期が近くなると、患者さん本人だけでなく、家族の覚悟も必要となってきます。そのため、訪問するご家庭では家族の方との関係性も重視していて「いざというときにはまず私に連絡をください」と言っています。

あるご家族は、自宅で容体が急変したとき、最初に救急車を呼んだそうです。しかし救急車は、受け入れ先の病院が決まらないと発車できません。そのときに私のところへ連絡がきました。

受付診察室前

私は「その方はもう末期がんの患者さんで、どこの病院へ行っても助かる見込みはないのです。知らない病院へ運ばれて体中に管を入れるような最期なら、自宅で看取ってあげましょう。」と伝え、救急車から下ろしたことがありました。患者さんご本人は「いつでも覚悟はできている」と仰っていたこともあり、予めご家族とそういった話はしていましたが、やはりいざとなるとパニックになってしまうものです。「患者さん本人にとって良き最期」をつくるのも、ご家族の協力なしにはできないと感じています。

医師でよかったと思う経験を教えてください
患者さんが元気になって帰っていったときですねやはり、患者さんが元気になって帰っていったときですね。昔、胃がんの手術をした患者さんがいました。がんがリンパ節にも転移して状況はかなり悪かったのですが、私がその患者さんを執刀して回復し、退院していきました。

周りの医師にも「再発する可能性が高い」と言われており、かなり心配でした。その後10年ほど経って、別の病院でその患者さんと偶然再会したのです。正直最初は「お化けかな?」って思い、足を見てしまいましたよ(笑)。

話を聞いたところ、再発することもなく元気に過ごされていたそうで、すでに90代後半ですが、今でも外来へいらっしゃっています。その方がここまで回復されたのも、私の手術の腕ではなく、その人の「生きたい気持ち」だと思います。私はその生きたいという気持ちを後押ししただけですから。

一般クリニックは、大学病院がうまく回るための受け皿となること今後の一次医療、二次医療に必要だと思うことを教えてください
私たち一般クリニックは、大学病院がうまく回るための受け皿となることが大切だと思います。「どんな患者さんでも診ますよ」というスタンスが大事。そうすることで、患者さんは大学病院を退院しても地域の医師に頼ることができます。

また大学病院も、クリニックがそういうスタンスだと患者さんをお願いしやすくなり、医療が円滑に回るのではないかと感じます。訪問診療をしていることを話すと「大変だろう」と言われることもしばしばあります。しかし、どの医師も「患者さんのためになることをしたい」というベースの考えは変わらないと信じています。

院長プロフィール呉兆礼院長<経歴>
1989年 東京女子医科大学 第二外科 入局

1990年 中山記念胃腸科病院
       (現:八王子消化器病院)

1992年 伊勢崎佐波医師会病院

1994年 中野江古田病院

1996年 大分市医師会立アルメイダ病院

1999年 朝霞台中央総合病院

2004年 藤代病院

2004年 牛久愛和総合病院

2005年 中野サンブライトクリニック

2012年 くれクリニック開業

<所属学会・認定医>
日本外科学会認定医・専門医
日本消化器外科学会認定医
日本ヘリコバクター学会認定医
日本医師会認定産業医
日本消化器内視鏡学会
日本腹部救急医学会
日本高血圧学会
日本在宅医療学会
東京女子医科大学 第二外科 非常勤講師

くれクリニック アクセスマップ

住所 東京都新宿区北新宿2-21-1 新宿フロントタワー3F
電話番号 03-6279-2893
アクセス 東京メトロ丸ノ内線「西新宿駅」より徒歩4分
東京メトロ丸ノ内線「中野坂上駅」より徒歩8分
都営大江戸線「西新宿五丁目駅」より徒歩10分
都営大江戸線「都庁前駅」より徒歩14分
診療科目 内科・外科・消化器内科・循環器内科・在宅訪問診療
診療時間 9:00~12:30/15:00~18:00
休診日 土曜午後、日曜、祝祭日

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